11月の月例経済報告では、景気判断「緩やかに回復」が継続。個人消費や設備投資に持ち直しの動きがみられる一方で、輸出・生産は横ばい、物価上昇・輸出リスクが景気の重しと指摘されています。賃金・雇用改善は続くが、「実感」に差が出やすい局面です。
1. 景気判断と構図 ― なぜ「回復」なのか、なぜ「安心できない」のか
政府は今回も「景気は、米国の通商政策の影響が自動車産業を中心に見られるものの、緩やかに回復している」との判断を維持しました。
ただし、輸出・生産・企業収益には「横ばい」「改善の足踏み」といった文言が並び、回復の実感が伴いにくい構造も浮かび上がります。輸出依存産業、とりわけ自動車などは米国の通商政策次第で揺れやすく、景気の安定性には疑問符も残ります。
2. 個人消費・物価・家計のリアル

ニュースでは「消費持ち直し」って言うけど、
家の支出は上がるばかりで実感がないですね。

物価上昇は継続中。サービス分野や食品価格の上振れで、
名目収入が増えても「実質の財布のゆとり」は必ずしも増えていない人も多い。
節約志向と支出の選別がもう一度鍵かもしれない。
実際、今回報告では「消費者物価は上昇している」「個人消費は持ち直しの動きあり」
とされているものの、物価高の影響で“実質家計力”には慎重な見方も必要です。
旅行・外食などサービス支出が堅調な一方、耐久財や日用雑貨は抑制されやすく、
家計の支出構造は“選別消費”が続きそうです。
3. 企業・設備投資・生産のリアル
報告では設備投資が「緩やかに持ち直し」、企業の業況判断は「おおむね横ばい」とされました。
ただし、企業収益については“改善に足踏み”の表現。これは、原材料価格・輸入物価の変動、為替、海外受注見通しの不透明さが背景にあるとみられます。とくに輸出依存の製造業(自動車、部材、機械など)は慎重な姿勢が目立ちます。
4. 雇用・賃金・所得環境
雇用情勢は改善の動きが確認されており、求人状況は底堅さを維持。失業率も安定的です。
ただし、物価高のなかで「名目賃金 ⇔ 実質所得」のギャップが埋まりにくく、可処分所得の実感は個人差が出やすい局面です。
5. 投資家・マーケットが注目すべき視点
- 輸出/為替/国際関係のニュースで急反応しやすい「輸出型製造業」は短期の値動き注意。
- 高インフレ・高コスト下でも「価格転嫁力」を持つディフェンシブ銘柄や内需サービス株は安定志向投資の選択肢。
- 家計視点では「支出の取捨選択/固定費の見直し」で実質力を守ることが重要。
6. 用語解説
| 用語 | 意味・ポイント |
|---|---|
| コアCPI | 生鮮食品を除いた物価指数。物価の‘基調’をみる指標。 |
| 実質雇用者報酬 | 物価の変動を加味した実質所得。賃金上昇でも物価が高ければ購買力は鈍化。 |
| 権利付き最終売買日 | 配当や分配の権利が確定する最終売買日。配当投資や株主還元で注目されやすい。 |
7. まとめ — 今月のキーワードは「安定の継続」と「分散の視点」
- 景気は「緩やかに回復」。ただし輸出や企業業績にはリスク。
- 物価高と所得の綱引きが続き、家計の実質実感は分かれやすい。
- 投資も、守り(ディフェンシブ)と選別(輸出高感応)で二極化の可能性。
- 家計は支出の“見直し”と、必要消費を見極める感度が大事。
参考:内閣府「2025年11月 月例経済報告(PDF)」

